かりそめ蜜夜 極上御曹司はウブな彼女に甘い情欲を昂らせる
「着いたぞ」
瑞希さんの声でタクシーが停まっていることに気づき、顔を上げる。
都内でも有数な、高級住宅が建ち並ぶ住宅街の一角。ひときわ目を引く超豪邸が、ドーンと目に飛び込んできた。
アシタホールディングスの会長のご自宅だから、ある程度の大きさはあると思っていたけれど、まさかここまでのものとはだれが想像しただろう。
緊張はさらに増し、今にも心臓が口から飛び出てしまいそうだ。
タクシーから降りると、瑞希さんに手を引かれ門から敷地内に入っていく。キレイに手入れされた庭には、ムクゲが白い花を咲かせている。
「大きなご実家ですね。すごい」
「そうか? 古いだけだぞ。無駄に広くて疲れる」
家族四人、2LDKの普通のマンションで生活していた身としては、『無駄に広くて疲れる』とかどんな生活なのか想像すらできない。でも一度くらいはそんなことを言ってみたいと思ったのは秘密。
重厚そうな玄関のドアを開け、家の中へと入る。思っていた通り玄関ホールは広々としていて、私が今暮らすアパートの部屋がすっぽり入ってしまいそうだ。