かりそめ蜜夜 極上御曹司はウブな彼女に甘い情欲を昂らせる

「大丈夫だ」
 
 私の耳元にそっと顔を寄せた瑞希さんが、そう囁くとポンポンと背中を優しく撫でてくれた。
 
 そうだった、私はひとりじゃない。
 
 撫でられた背中から、じわりと温かさが身体中に広がっていく。瑞希さんを見上げると彼の柔和な目と交わり、小さく頷くと深呼吸をして気持ちを整えた。

「そんなところでいつまで立っていないで、早くこっちに来て座りなさい」
 
 お父様にそう促されて、瑞希さんのあとについてソファに横に立った。

「父さん。彼女が──」
「初めまして! 野中葉月と申します。本日は、よろしくお願いいたします」
 
 そう言ってから深々と頭を下げて、今の挨拶でよかったかしらと恐る恐る顔を上げた。

「葉月さん初めまして、遊佐基希です。瑞希から昨日連絡をもらって楽しみにしていたけれど、元気なお嬢さんだ。さあ、座りなさい」
「はい。失礼いたします」
 
 食い気味に挨拶をしたのがいけなかったのか笑われているような気がするけれど、嫌な感じはしない。その場の雰囲気が明るくなって、少し肩の荷が下りた気分だ。
 
 足の上に置いていた左手に、瑞希さん緒右手が重なる。スルッと優しく撫でられて、それだけで心が温かくなった。


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