かりそめ蜜夜 極上御曹司はウブな彼女に甘い情欲を昂らせる
「ほら、言った通りだろ」
耳元で瑞希さんがそう呟き、目尻の涙を拭うと「はい」喜び勇んで返事をする。するといつの間にかいなくなっていたお母様が、大きなトレーを持ってリビングに戻ってきた。
「はい、お待ちどおさま。葉月さんは、お紅茶でよかったかしら?」
「は、はい。紅茶、大好きです。すみません、お手伝いもしないで」
「いいのよ、気にしないで。今日は“まだ”“、お客様だもの。でも今度来たときは、一緒にお願いね」
そう言ってお母様はにっこりと笑う。お母様の気持ちが嬉しくて、またポロリとうれし涙がこぼれた。まだ気が早いかもしれないが、いい親子関係が築けそうだと今から楽しみで仕方がない。
焼き立てのシフォンケーキからはまだ湯気が立っていて、紅茶のいい香りが漂っている。
「お菓子作りは、母さんの趣味でね。息子の俺が言うのもなんだけど、シフォンケーキは絶品だ」
「そうなんですね。じゃあ今度、教えていただかなくちゃ」
「まあ、嬉しいことを。いつでも教えてあげるわよ。いっそのこと、一緒に暮らすっていうのはどうかしら。ねえ、あなた?」
お母様の興奮は収まるところを知らず、お父様も少し困惑気味で「まあまあ」と苦笑を漏らしている。