かりそめ蜜夜 極上御曹司はウブな彼女に甘い情欲を昂らせる
わけのわからない涙が目に溜まり、それを隠すように目を閉じると目尻からぽろぽろと溢れ出す。
「ごめん。悪かった」
遊佐部長が近づいた気配に目を開ける。
「なにが悪かったんですか? 謝るくらいなら、キスなんてしないでください」
「そうだな。でももう我慢の限界。葉月のことが好きなんだ」
遊佐部長、今私のことを好きって言った? それって、どういう意味?
突然の告白に、すぐに言葉が出ない。
「……嘘」
「嘘じゃない。でも一回りも違う歳の差に、すぐに告白できなかった」
遊佐部長は真剣な眼差しを向けると、私の腕を引いて優しく抱きしめる。いきなりの告白に、この状況がうまく呑み込めない。
遊佐部長が、私のことを好き? 遊佐部長は嘘じゃないというけれど、なんの取柄もない私を遊佐部長が好きになるなんて、そんなことあるわけがない。
「信じられません」
「結構態度で示してたつもりだったが、気づかなかったか?」
どこでどう示していたというのか、全くわからなかった私は首を大きく横に振る。それを見て苦笑した遊佐部長は、私の髪をくしゃくしゃと撫でた。
「じゃあこれからはもっと愛情表現していくから、そのつもりで」
私の気持ちはお構いなしにそう言い放つ遊佐部長は、余裕綽々と言わんばかりに微笑んでいる。
それに引き換え私はといえば、胸の鼓動の激しさを抑えるのが精いっぱいだった。