かりそめ蜜夜 極上御曹司はウブな彼女に甘い情欲を昂らせる
煮詰まっていたのは仕事のせいじゃない。だからつい、謝罪の言葉が口をついて出てしまった。電話の向こうから、遊佐部長のふっと笑った声が聞こえてくる。
『また、すみませんか? 謝るのは俺のほうだろう。長いこと連絡できなくてすまなかった。明日の夜にはそっちに戻るが、葉月、明後日の土曜日に会えないか?』
「え?」
土曜日に会うということは、仕事ではなくプライベートでということ? それってもしかしてデート……なんだろうか。
土曜日は部屋の掃除をしようと思っていただけで、特に予定は入っていない。だから、会えると言えば会えるけれど……。
『なんだ。他に用事でもあるのか?』
「用事なんてありません。ただ、ちょっと」
ふたりだけで会うのが恥ずかしいというか緊張するというか、どうすればいいのかわからないだけ。
『ちょっと、なんだ? 用事がないのに会えない、その理由を聞きたい。俺には言えないことなのか?』
次から次へと矢継ぎ早に問い詰められて、ぐうの音も出ない。女子には時として言えないこともあるんだということを、少しは察してほしい。