かりそめ蜜夜 極上御曹司はウブな彼女に甘い情欲を昂らせる
身長百五十センチ、体重……。小柄で子どもっぽい体形から、今でもバスに乗るとよく中学生に間違えられる。胸のあたりまで伸びた緩くウェーブした髪をひとつに束ね、服装は至って普通のグレーのスーツを着ている地味な私。
子どもの頃から自分の容姿に自身がなく、目立つことはしないでひっそりと生きてきた。それは社会人になっても変わらず、存在感を消して──とまでは言わないけれど、なるべく人目を引かないように過ごしている。
もちろん恋なんてしたことがない。ずっと男女共学の学校に通っていたけれど子供っぽい地味な私を好きになってくれる人もおらず、自分から男性に興味を持ったこともなかった。
そんな私は大学を卒業後、新入社員としてアシタホールディングスに入社。新人研修で人事部に行ったときに根気よく一から仕事を教えてくれたのが遊佐部長だった。
地味でなんの取柄もない私だけれど、仕事だけは真摯に一生懸命取り組んだのがよかったのか、はたまたよくミスをするから目が離せなかったのか、なにはともあれ今でもよく目にかけてもらっている。