かりそめ蜜夜 極上御曹司はウブな彼女に甘い情欲を昂らせる
なんて勝手なことを思い、ひとり憤慨しながら口を開く。
「大したことじゃないので、さっきの言葉は忘れてください。わかりました。明後日の土曜日空けておきますけど、なにかあるんですか?」
そのくらいは聞く権利があるだろうと、少しだけ語気を強めて聞いてみる。
『なにかあるのかって。会いたいって言ってるんだ、理由なんてひとつしかないだろう』
そう言ったあと聞こえてきたのは、くすくすと笑う声。どうやら私の心の中は、見透かされているみたいだ。
『デートするか?』
「えぇ、デート……ですか?」
たぶんそうだろうと思っていたけれど、はっきりと言われて戸惑ってしまう。でも遊佐部長とデートできるなんてそんな夢のようなこと、後にも先にもその日だけかもしれない。だったら自分の気持ちに、今のこの状況を楽しんで素直になったほうがいい。きっといい思い出になるはずだ。
「えっと、あの。よろしくお願いします」
デートするかと聞かれた答えが『よろしくお願いします』はどうなのかなと思っても、それしか思いつかない。
『ああ。まあどんな返事が返ってきても、連れ出すつもりでいたけどな。じゃあ土曜日、十一時に迎えに行く』
「迎えに行くって、私が住んでるところ──」
『俺を誰だと思ってるんだ? 葉月の住んでるとこなんて、すぐにわかる』
それって職権乱用じゃないですか。そう言おうとして、でもすぐにやめた。
遊佐部長の以外にも楽しそうな声を聞いて、私の小さな胸は痛いくらいに高鳴っていった。