かりそめ蜜夜 極上御曹司はウブな彼女に甘い情欲を昂らせる
ブックマーカーをはさんでおいたページを開き、ゆっくりと視線を落とす。さあ読み始めますかと思ったとき、カフェの入り口のほう人の気配がして顔を向けた。
「遊佐部長……」
まさかこんな早くに来ると思ってなかったから、呆然としてしまう。ソファに座ったまま遊佐部長を見て呆けていると、そんな私を見つけた遊佐部長がこっちに向かって歩いてきた。
いつものスーツ姿とは違い、ボタンの色がアクセントになっている白シャツにベージュのチノパン。シャツの上にネービーのテーラードジャケットを羽織っている姿は、雑誌の男性モデルも敵わないほど素敵だ。
どんなときでも遊佐部長はスマートなんだと感心してしまう。それに比べて私は……。
窓ガラスに映る自分を見て、遊佐部長とは釣り合わない姿に胸がチクリと痛んだ。
「待たせたな」
「い、いえ、約束の時間よりうんと早いです。すみません、急がせてしまいましたよね?」
こんなことならもう少し後にメールするんだったと反省していると、頭にぽんと手が乗せられる。遊佐部長は髪をクシャッと一撫でしてから、前の席に腰を下ろした。