かりそめ蜜夜 極上御曹司はウブな彼女に甘い情欲を昂らせる
「彼女を待たせるわけにはいかないだろう。それに今日は仕事じゃない。気を使う必要もなければ、敬語で話す必要もない。デートなんだ、もっとリラックスしたらどうだ?」
遊佐部長はそう言うと、飲み物を頼むために席を立った。
顔を見て話をするのだって難しいのに敬語? そんなの無理に決まっている。リラックスなんてもってのほか、緊張しかない。
カウンターに向かう遊佐部長の背中を見ながら思うこと。それは……。
あんなに素敵な人の彼女が、私なんかでいいのだろうか。
本気なのか冗談なのか、遊佐部長は事あるごとに“彼女”発言をする。嬉しくないわけではないけれど、身分不相応な気がして落ち着かない。
「どうした?」
気づかぬうちに遊佐部長がそばにいて、彼を見上げると堪えるように笑っている。きっと私の動きが可笑しかったんだと思うけれど、だからといって笑うなんて人が悪い。でもあまりにも屈託のない笑顔に怒る気も失せてしまった。
「どうもしません。すみませんでした」
「だから、謝らなくていいって言ってるだろう」
そう言われても、遊佐部長を目の前にするとつい謝ってしまう。どうやら癖になっているみたいだ。