かりそめ蜜夜 極上御曹司はウブな彼女に甘い情欲を昂らせる

 でも実のところは怒っているのではなく、男性と付き合ったことがないことを見透かされていたのが恥ずかしいだけ。でも本当のことで反論できないでいると、遊佐部長の咳払いが聞こえて顔を上げた。彼の心ありげな瞳と交わって、少しだけ目を逸らした。

「怒ってるのか?」
「別に怒ってるわけでは……」
「まぁ、そういうことにしておくか。ところで、最近オープンしたばかりの水族館にはもう行ったか?」
「水族館? あっ、今朝テレビで見ました。いろいろ仕掛けがあって面白そうだなって思ってたんです。ペンギンやイルカやオットセイなんかと触れ合えるみたいですし……ってすみません。ひとりではしゃぎすぎました」
 
 実は生き物はなんでも好きで興奮してしまった。でも水族館にはもう行ったかなんて聞くということは、もしかして……。

「じゃあ一緒に行くか?」
「いいんですか? はい、嬉しいです」
 
 行ってみたいと思っていたけど、水族館にひとりで行くのは悲しすぎる。そう思って杏奈を誘ったというのに、『行かない』と即答されて心が折れてしまったのだ。
 
 だからその水族館に遊佐部長と行けるのなら一石二鳥、喜びもひとしおだ。


< 26 / 139 >

この作品をシェア

pagetop