かりそめ蜜夜 極上御曹司はウブな彼女に甘い情欲を昂らせる
ひとりでワクワクしていると、ふと視線に気づく。遊佐部長が目を細めてこっちを見ていて、浮かれていた自分に咄嗟に顔が熱くなった。
「葉月はそうやって、素直に笑っていたほうがかわいい。だから俺の前では飾らず、普段通りの葉月でいてほしい」
「遊佐部長……」
これ以上浮かれてはいけないと思っているのに、かわいいなんてさらりと言われて顔が緩みそうになる。
まだデートはこれからなのに、今からこんな調子じゃ先が思いやられると心の中でため息をつき天を仰いだ。
「じゃあ、そろそろ行こう」
そんな私をよそに、遊佐さんはそう言って席を立つ。まだ座っている私の横に来ると、すっと手を差し出した。
「え?」
私が戸惑っている間に、さり気なく、ごく自然に、遊佐さんは私の手を取った。
「な、なんで……手……」
私の声は遊佐さんに届いているはず。それなのに彼はなにも言わないまま私の手を引いて歩き出した。他のお客さんの視線を気にしながら、前を歩く遊佐さんの後ろ姿を眺める。
繋がれている遊佐さんの手は優しくて、勝手に顔がニヤけそうになるのを必死で抑えた。