かりそめ蜜夜 極上御曹司はウブな彼女に甘い情欲を昂らせる
キスされたこともあやふやになってふてくされていると、運転席に乗り込んだ遊佐部長が私の頭をポンポンと優しく撫でた。
「名前で呼ぶのは難しいか? デートなんだから、せめて『部長』はやめてほしい」
「はい、わかりました」
「素直でよろしい。じゃあ一度呼んでみて」
「……遊佐、さん?」
いきなり無理難題を突き付けられて、最後が疑問形になってしまう。自分でもなんだか可笑しくて、ふふっと笑いがこみ上げた。
「最初にしてはいいんじゃないか。まあいずれは、名前で呼んでもらうけどな」
「努力します」
「ああ。なるべく早めに頼む」
そう言うと遊佐さんは頭に乗せていた手を滑らせ、私の頬を一撫でしてからハンドルを握った。そのときに見せた妖艶な眼差しが、心をとらえて離さない。
デートはまだ始まったばかり。それなのに、今からこんなにドキドキしていたら身が持たない。
また顔が赤くなってはいないだろうか。恥ずかしくてたまらない。