かりそめ蜜夜 極上御曹司はウブな彼女に甘い情欲を昂らせる
 
 車の中というふたりだけの密閉空間に最初こそ戸惑ったけれど、さっきのカフェのように他の人からの視線が気にならない分、今は落ち着きを取り戻している。
 
 それでも遊佐さんのほうは見れなくて、窓の外の流れる景色に目を向けた。
 
 私から話しかけられないのを気づかってか、遊佐さんは私に「食べ物はなにが好きなんだ?」とか「休日はなにをして過ごしてる?」とか聞いてきて、そんな他愛のない話をしているといつの間にか目の前に水族館が姿を現した。
 
 四月最後の土曜日だから混雑しているかと思っていたけれど、ゴールデンウイーク前で出かけるのを控えているのかさほど込んでいない。
 
 それなのに車を降りるとすぐに「はぐれないように」と手を繋がれ、四月のぽかぽか陽気のせいか、それとも緊張しているからか、汗ばんでいるのが気になって仕方ない。
 
 カフェでコーヒーと一緒に軽食を取り、ふたりともあまりお腹が減っていないと昼食はあとですることにした。


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