かりそめ蜜夜 極上御曹司はウブな彼女に甘い情欲を昂らせる

「それにしても、会社にいるときとは違うイメージで驚いた」
 
 それは着ている服や、今日は珍しくおろしている髪のことを言っているのだろう。

「そうですよね。会社での私は地味ですから……」
 
 わかってはいたことだけど、遊佐さんに言われると胸が痛む。

「いや、地味とは一度も思っていない。会社は遊びに来るところじゃないからな、会社での清潔感があってしっかり者って感じの葉月のスーツ姿は嫌いじゃない。まあ本当のところは、おっちょこちょいな女子だったけどな」
 
 遊佐さんはきっと栄養補助食品をのどに詰まらせた、ふたりで残業をした日のことを言っているんだろう。忘れてほしい恥ずかしい汚点なのに、余程面白かったのか事あるごとにこの話を出すのだ。

「もう、やめてください。おっちょこちょいで地味な私のことなんて、放っておいてください。今日のこの格好だって、どうせ似合ってないですし」
 
 こんなことならもっと自分に似合う、地味なスタイルにすればよかった。
 
 少しでも遊佐さんに可愛いと思ってもらえるようにと精一杯お洒落したつもりだったけれど、どうやら裏目に出てしまったみたいだ。


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