かりそめ蜜夜 極上御曹司はウブな彼女に甘い情欲を昂らせる
でも少しバランスを崩したイルカは身体全体で水面に下りてきて、ザブンと大きな音と共に凄まじい量の水しぶきを上げた。それは私と遊佐さんに向かってまるで台風のときの土砂降りの雨のように、逃げる間もなく振ってきた。
言うまでもなくふたりとも頭のてっぺんからつま先までずぶ濡れになり、水を振り払おうと濡れた頭を何度も振った。
遊佐さんの吐息が触れて熱くなった身体は、一瞬で冷えてしまったようだ。
「くしゅんっ!」
四月下旬の昼下がりと言えば暖かく、濡れたところですぐに乾くと思っていたけれど……。
「葉月、大丈夫か?」
「はい、なんとか」
遊佐さんは自分も全身ずぶ濡れ状態なのに私の心配をしてくれて、なにか拭くものかないか探し始めた。こんなときに不謹慎かもしれないけれど、彼の濡れた髪がやけに艶っぽくて直視できない。水も滴るいい男……なんて言うけれど、それを地でいっている感じだ。
だからって、本当に濡れる必要はない。このままじゃ遊佐さんも身体が冷えてしまうと、バッグの中からハンドタオルを取り出す。彼の濡れた髪を拭こうと手を伸ばしたら、その手を素早く取られた。