かりそめ蜜夜 極上御曹司はウブな彼女に甘い情欲を昂らせる
いけない……と、彼を起こさないように慌てて口を手で押さえようとしたそのとき……
突然瑞希さんが、パッと大きく目を開いた。
「っ!?」
思わず叫ぼうとした声は声にならず、身体を硬直させたまま呆けてしまう。
だってその目は、今起きたばかりの焦点が合わないものとは違う。まだ少し眠そうな顔はしているが、明らかに数十分は経っている目だ。
「おはよう、葉月」
瑞希さんは少し身体を起こし横向きになると、片肘ついて手のひらで頭を支え私を見下ろした。
「お、おはようございます」
ドキドキしながら瑞希さんの目を見つめる。彼は数秒間私を見つめた後、手を伸ばして私の頬に触れた。少し骨ばった綺麗な指が触れられて、緊張感に息をひそめた。
「それで。今日も頬は痛かったのか?」
「え? なんでそれを……」
瑞希さんは寝ていたはず。それなのに知っているということは……。
「あ!」
今更だけれど寝たふりをしていただけなんだと気づき、大きな声を上げてしまう。