かりそめ蜜夜 極上御曹司はウブな彼女に甘い情欲を昂らせる

「え?」
 
 おもわず遊佐部長の顔を見上げると、彼の瞳に引きつけられて目が離せなくなる。もう片方の手は頬に触れ、すっと顔の輪郭に触れるか触れないかのところですべらせた。驚いて、遊佐部長の顔を見つめることしかできない。

「仕事とはいえ、いつも野中ばかりに世話をかけてすまない」
 
 一体どうしたというのだろう。今までと同じことをしているだけなのに、こんなこと初めてでどう答えたらいいのかわからず目を泳がせた。

「あ、あの、これは……」
「野中どうした、顔が真っ赤じゃないか」

 じわじわと距離が近くなる。間近でこんなに綺麗な顔を見せられて甘い声でささやかれると、頭がくらくらする。

「遊佐部長……」
「野中が可愛い反応をするからいけない。でも呼び止めたのは悪かった。もう戻っていい」
 
 遊佐部長はそう言って、今度は私の頭をポンポンと優しく撫でた。男の人にそんな風に触られたのは初めてで、きっと私の顔はさっきより赤くなっているに違いない。
 
 なんだったの、今のは……。
 
 遊佐部長のわけのわからない行動に戸惑い「し、失礼します」と挨拶もそこそこに、専務室から足早に飛び出した。






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