かりそめ蜜夜 極上御曹司はウブな彼女に甘い情欲を昂らせる
まさか瑞希さんがこんな時間に出勤してくるなんて、予想だにしなかった。いつもなら人事部には寄らず直接専務室に向かうはずなのに、どうして今日に限ってここに来たのか。逸る胸を押さえる。
「おはよう、葉月。今はまだ誰もいないんだ。瑞希で構わない」
「そういうわけにはいきません。プライベートと仕事は別、公私混同はいけません」
「そうだな、公私混同はいけないよな。でもじゃあなんで、俺の席に座っていたんだ?」
「あ……」
突然瑞希さんが現れるから気が動転して、そのことをすっかり忘れていた。でも今更どうすることもできないし、偉そうに座っていたのは見られているわけで。
「すみませんでした」
あぁ、もうホント、穴があったら入りたい気分だ……。
「謝る必要はない。そんなに俺が恋しかったのか?」
意地悪くそう言うと瑞希さんは私のところまできて、スッと腕を上げて軽く頬に触れた。
瑞希さんの椅子に座ったとき近くに感じてすぐにでも会いたいと思ってしまったのだから、恋しかったことは間違いない。昨日の今日でそんなこと認めるのは恥ずかしくて、黙ったまま首を横に振った。