かりそめ蜜夜 極上御曹司はウブな彼女に甘い情欲を昂らせる

 フロアに到着すると、室内がいつもより少しざわついていることに気づく。なにかったのかデスクに向かい、杏奈に声をかけた。

「杏奈、おはよう。なんだか慌ただしいけど、なにかあったの?」
「ああ葉月、おはよう。今日は少し遅いんじゃない?」
「う、うん。いろいろあってね」
「そうなの? その話はあとで聞くとして。どうもね、名古屋支店移転の件でトラブルが発生したみたいなの。遊佐部長は責任者ってことですぐに名古屋に行ったみたいなんだけど、しばらくこっちには戻れそうにないんだって」
 
 だから慌ただしかった、というわけだ。
 
 このあと人事部全員が集められて事の成り行きの説明を受け、当分の間は和田副部長が部長代理として指揮を執ることで話は終わった。
 
 瑞希さん、大丈夫かな……。
 
 私がそんな心配をしたところで、なんの役にも立たない。しかも自分から別れを切り出したのだから、そんなことを思うこと事態お門違いだ。
 
 でも、ちょうどよかったのかもしれない。今瑞希さんと顔を合わせても、実際のところどうしたらいいのかわからなかった。

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