我が町のヒーローは、オレンジでネイビーで時々グレー
4 防災訓練は密着タイム!?
それから何日かが過ぎて、防災訓練の日がやってきた。
天気は快晴、雲ひとつない春の穏やかな日。
朝、そんなに広くはない園庭に消防車が入ってくる。
私のクラスの2歳児たちはみな窓にくっつき、その様子に見とれている。
「先生、消防車きた!」
「かっこいい~!」
私もちらりと窓の外を見ると、ちょうど消防車は停まったところ。
助手席から降りてきたのは、この間お会いした隊長さん。今日もネイビーの隊服を着ている。彼は園庭にいた園長たちとすぐに何かを話始めた。
少し遅れて運転席から降りてきたのは、誠護さんだった。
空を見上げてから、2階の窓のこちらに気づき、爽やかスマイルを浮かべてこちらに手を振る。
「わぁ! この前の消防士さん!」
園児たちから歓声が上がると、誠護さんは口を開けて大きく笑った。
「先生、いつ訓練始まるの?」
「早く訓練したーい!」
訓練って、そういうものじゃないんだけどな……と苦笑いをしていると、教室のスピーカーからけたたましいベルの音が聞こえた。
──ジリリリ、ジリリリリリ
「訓練、訓練」
「さあ、みなさん、避難訓練ですよ」
子どもたちは得意気にポケットからハンカチを取り出した。
* * *
年長さんをはじめとして、園庭にビシッとならんだ園児たち。
私は0歳児をおんぶして、一列に並んだ我がクラスの園児たちを後ろから眺める。
緊張しているのか肩に力の入っている可愛らしい後ろ姿。
クスっと笑みを漏らすと、0歳児クラスの先生がおぶった子を迎えに来てくれた。
ここから先は2歳児クラス以上がお話を聞く時間だ。
「みちる保育園のみなさん、こんにちは」
消防隊の隊長さんのお話が始まる。
しかし、2歳児たちの視線は誠護さん──もとい、その後ろの消防車に釘付けだ。
「では、実際の消火の様子をみなさんにも見てもらいましょう」
その声に、私も2歳児たちを園庭の端に丸くなるように誘導する。
そしてその真ん中に本物の火が焚かれると、園児たちから歓声があがった。
小さな炎の隣で、隊長さんと誠護さんが消火器をかかげた。
「みなさん、これを見たことがありますか?」
「消火器!」
「消火器だ!」
園児たちからパラパラと声が上がる。
「そうです、消火器です。これは、小さな炎を消す道具です。みなさんは触れることができませんが、おとなの人は使うことができます。実際に、やってもらいましょう」
隊長さんがそう言っている間、園児たちは炎に見入っている。
この後は、副園長が出てきて消火器で実際に火を消す、という段取り。
──が、副園長が出てこない。
「あれ、副園長先生?」
隊長さんはきょろきょろとしている。
その時、私は保育園の玄関口に副園長の姿を見つけた。スーツ姿の人と共にいる。
急な来客だろうか。
「あー、隊長さん!副園長は今──」
しまった。
声をあげてから、気づいた。
園児たち先生たち消防隊の皆様の視線がこちらに注がれていたのだ。
「じゃあ、そこの先生! 消火に挑戦してみましょう!」
隊長がニッと口角をあげて私を指差す。
え、わ、わ、わ、私──!?
天気は快晴、雲ひとつない春の穏やかな日。
朝、そんなに広くはない園庭に消防車が入ってくる。
私のクラスの2歳児たちはみな窓にくっつき、その様子に見とれている。
「先生、消防車きた!」
「かっこいい~!」
私もちらりと窓の外を見ると、ちょうど消防車は停まったところ。
助手席から降りてきたのは、この間お会いした隊長さん。今日もネイビーの隊服を着ている。彼は園庭にいた園長たちとすぐに何かを話始めた。
少し遅れて運転席から降りてきたのは、誠護さんだった。
空を見上げてから、2階の窓のこちらに気づき、爽やかスマイルを浮かべてこちらに手を振る。
「わぁ! この前の消防士さん!」
園児たちから歓声が上がると、誠護さんは口を開けて大きく笑った。
「先生、いつ訓練始まるの?」
「早く訓練したーい!」
訓練って、そういうものじゃないんだけどな……と苦笑いをしていると、教室のスピーカーからけたたましいベルの音が聞こえた。
──ジリリリ、ジリリリリリ
「訓練、訓練」
「さあ、みなさん、避難訓練ですよ」
子どもたちは得意気にポケットからハンカチを取り出した。
* * *
年長さんをはじめとして、園庭にビシッとならんだ園児たち。
私は0歳児をおんぶして、一列に並んだ我がクラスの園児たちを後ろから眺める。
緊張しているのか肩に力の入っている可愛らしい後ろ姿。
クスっと笑みを漏らすと、0歳児クラスの先生がおぶった子を迎えに来てくれた。
ここから先は2歳児クラス以上がお話を聞く時間だ。
「みちる保育園のみなさん、こんにちは」
消防隊の隊長さんのお話が始まる。
しかし、2歳児たちの視線は誠護さん──もとい、その後ろの消防車に釘付けだ。
「では、実際の消火の様子をみなさんにも見てもらいましょう」
その声に、私も2歳児たちを園庭の端に丸くなるように誘導する。
そしてその真ん中に本物の火が焚かれると、園児たちから歓声があがった。
小さな炎の隣で、隊長さんと誠護さんが消火器をかかげた。
「みなさん、これを見たことがありますか?」
「消火器!」
「消火器だ!」
園児たちからパラパラと声が上がる。
「そうです、消火器です。これは、小さな炎を消す道具です。みなさんは触れることができませんが、おとなの人は使うことができます。実際に、やってもらいましょう」
隊長さんがそう言っている間、園児たちは炎に見入っている。
この後は、副園長が出てきて消火器で実際に火を消す、という段取り。
──が、副園長が出てこない。
「あれ、副園長先生?」
隊長さんはきょろきょろとしている。
その時、私は保育園の玄関口に副園長の姿を見つけた。スーツ姿の人と共にいる。
急な来客だろうか。
「あー、隊長さん!副園長は今──」
しまった。
声をあげてから、気づいた。
園児たち先生たち消防隊の皆様の視線がこちらに注がれていたのだ。
「じゃあ、そこの先生! 消火に挑戦してみましょう!」
隊長がニッと口角をあげて私を指差す。
え、わ、わ、わ、私──!?