我が町のヒーローは、オレンジでネイビーで時々グレー
「誠護さん!」
数分後、そこに戻ってきた私。
「やっぱ早えな、お前」
みちる保育園でも、何度か訪れた公園ということもあり、AEDの場所は何となく覚えていた。
足手まといで、終わりたくない。
私も、彼を助けたいから。
「救える命は、救いたいから!」
そう言って、必死に心臓マッサージを続ける彼の横にそれを置いた。
「助かる。……できるか?」
「え! 私が!?」
誠護さんは周りを見回した。
「できねーならいい」
「……できる! 私だって、保育士になるときに救命講習受けたんだから!」
そうだ。
思い出せ。
私にだって、できるはず。
「AED使ったことあんのか?」
「ないけど……誰でも最初はそう、なんでしょ? 音声ガイドもあるし。それで、救える命が増えるなら、私がやる!」
「……頼んだ」
誠護さんは心臓マッサージの手を止めない。
その横で、AEDを準備する。
音声ガイドにしたがって、小さな体にパッドを貼り付けていく。
──離れてください。
AEDから流れる音声に従って、誠護さんは手を離す。
「電気ショック、したらそのまま胸骨圧迫。出来るか?」
「やる」
「ヤバイと思ったら叫べ。駆けつける、いいな」
「うん!」
音声ガイドに従って、電気ショックのボタンを押す。
押しながら、救命講習を思い出す。
ショッピングモールでの、誠護さんを思い出す。
動け、動け、動け……
言われた通り、胸骨圧迫を繰り返す。
大丈夫、大丈夫。
きっと、救える。
彼がそばにいる。
だから……
──トク、トク、トク
「嘘……」
小さな鼓動を感じて、ほう、と息をついた。
生きてる……、生きてるよ……
それは、必死に生きようとしているサイン。
気づけば、けたたましいサイレンとともに何台かの救急車が、救急隊が駆けつけていた。
「救命、感謝します」
私の元にやって来た救急隊に子どもを引き渡す。
そこでやっと周りを見れば、トレーラーの火は消防隊によってほぼ消され、抱き合う親子、泣く家族、それぞれの姿が見えた。
誠護さんは……?
キョロキョロと見回せば、救急隊と何かを話している彼。
しばらくして、救急隊が救急車に戻ったタイミングでこちらに気づいた誠護さんは、額の汗を拭いながらこちらに歩いてきた。
「お疲れさん」
その一言に、どっと安堵が押し寄せて、その場にへたり込んだ。
誠護さんはしゃがんで、私の頭をガシガシ撫でた。
「色々サンキュ。助かった」
「……ただの能天気じゃないんだからね」
そっぽ向いてそういうと、「悪かった」と小さな声で謝罪が聞こえた。
「お前、たくましかった。消防士になれる」
「なりません。私は保育士です」
誠護さんはケラケラ笑った。
けれどそれは、馬鹿にしたような笑いじゃない。
私もつられて笑ったら、なんだか気分がすっきりした。
数分後、そこに戻ってきた私。
「やっぱ早えな、お前」
みちる保育園でも、何度か訪れた公園ということもあり、AEDの場所は何となく覚えていた。
足手まといで、終わりたくない。
私も、彼を助けたいから。
「救える命は、救いたいから!」
そう言って、必死に心臓マッサージを続ける彼の横にそれを置いた。
「助かる。……できるか?」
「え! 私が!?」
誠護さんは周りを見回した。
「できねーならいい」
「……できる! 私だって、保育士になるときに救命講習受けたんだから!」
そうだ。
思い出せ。
私にだって、できるはず。
「AED使ったことあんのか?」
「ないけど……誰でも最初はそう、なんでしょ? 音声ガイドもあるし。それで、救える命が増えるなら、私がやる!」
「……頼んだ」
誠護さんは心臓マッサージの手を止めない。
その横で、AEDを準備する。
音声ガイドにしたがって、小さな体にパッドを貼り付けていく。
──離れてください。
AEDから流れる音声に従って、誠護さんは手を離す。
「電気ショック、したらそのまま胸骨圧迫。出来るか?」
「やる」
「ヤバイと思ったら叫べ。駆けつける、いいな」
「うん!」
音声ガイドに従って、電気ショックのボタンを押す。
押しながら、救命講習を思い出す。
ショッピングモールでの、誠護さんを思い出す。
動け、動け、動け……
言われた通り、胸骨圧迫を繰り返す。
大丈夫、大丈夫。
きっと、救える。
彼がそばにいる。
だから……
──トク、トク、トク
「嘘……」
小さな鼓動を感じて、ほう、と息をついた。
生きてる……、生きてるよ……
それは、必死に生きようとしているサイン。
気づけば、けたたましいサイレンとともに何台かの救急車が、救急隊が駆けつけていた。
「救命、感謝します」
私の元にやって来た救急隊に子どもを引き渡す。
そこでやっと周りを見れば、トレーラーの火は消防隊によってほぼ消され、抱き合う親子、泣く家族、それぞれの姿が見えた。
誠護さんは……?
キョロキョロと見回せば、救急隊と何かを話している彼。
しばらくして、救急隊が救急車に戻ったタイミングでこちらに気づいた誠護さんは、額の汗を拭いながらこちらに歩いてきた。
「お疲れさん」
その一言に、どっと安堵が押し寄せて、その場にへたり込んだ。
誠護さんはしゃがんで、私の頭をガシガシ撫でた。
「色々サンキュ。助かった」
「……ただの能天気じゃないんだからね」
そっぽ向いてそういうと、「悪かった」と小さな声で謝罪が聞こえた。
「お前、たくましかった。消防士になれる」
「なりません。私は保育士です」
誠護さんはケラケラ笑った。
けれどそれは、馬鹿にしたような笑いじゃない。
私もつられて笑ったら、なんだか気分がすっきりした。