我が町のヒーローは、オレンジでネイビーで時々グレー
誠護さん! と私が思ったのと、彼が口を開いたのはほぼ同時だった。
「あ、ジャー……!」
思いっきり彼を睨み付ける。あいにく両手は子どもたちで塞がっていたから。
誰が子どもたちの前で『ジャージ女』なんて呼ばせますか!
「……じゃなかった、みんなはみちる保育園の子かな?」
「そうだよ、お散歩!」
男の子が、キラキラとした眼差しで彼を見つめる。
「消防士さんも、お散歩?」
誠護さんはハハっと笑って、その場にしゃがんで子どもたちと目線を合わせた。
「残念、僕たちはお仕事。消火栓って知ってるかな? 火事があったときに、お水を出すところ。その、点検をしていたんだ」
「ねえ、何でオレンジの服じゃないの?」
先程青い服だから消防士じゃないと言った子が、誠護さんに尋ねた。
「普段はこの色なんだ。火事の時には、火に強いオレンジ色の服を着る。どっちも素敵な色だろう?」
爽やかな笑顔で、そう答える誠護さん。
園児たちの羨望の眼差しはやまないが、彼だって仕事中だ。
「消防士さんはお仕事中なので、私たちもそろそろ帰りますよ」
邪魔してはいけないと、思わず止めてしまった足を進めようとした時だった。
「えー、まだ聞きたいことある!」
園児たちのブーイング炸裂である。
「僕は全然いいですよ。他の隊員待ってるだけで、暇なんで」
私を笑うときとは違う、爽やかスマイルが私に投げられる。
「じゃあ、質問ある人~?」
「はーい、はーい!」
勝手に指揮をとられ、ため息をつく。
「この横についているグルグルで、火を消すの?」
女の子が消防車を指差して尋ねる。
「残念。これは、水を汲み上げるホースなんだ。おうちの人が、お風呂のお湯でお洗濯しているところを見たことあるかな?」
「あ、ある! ずずず~って、すごい音する!」
「そうそう、そんな風に……」
キラキラ爽やかスマイルで子どもたちに自身の仕事を話す誠護さん。
「お兄さんは、ヒーローだね!」
また別の男の子がそう言って、誠護さんはハハッと笑うと、その子の頭をクシャクシャ撫でた。
「あーずるい! 私もやって!」
いつの間にか彼の周りには園児たちが群がって、頭なでなでを要求している。あっけにとられて見ていると、後ろから一際大きな声が響いた。
「お、黒岩、モテモテだなぁ!」
「隊長!」
ガハハと豪快に笑いながら登場した男性に、一瞬園児たちはピクリと肩を振るわせた。
「俺は怖がられちゃってるよ! ははっ!」
そう言いながらも誠護さんと肩を組んだ“隊長”らしき人は、園児たちに向かってとびきりの笑顔を見せた。
「消防士になりたい人!」
2人がピシっと手をあげて、一人がもじもじと手を上げた。
「お、いいですね。では、未来の消防士諸君に、このお兄さんからメッセージをどうぞ!」
「隊長、無茶ぶりすぎません?」
「いいじゃねえか、夢見せてやれ!」
「ん、んん……えー、では。消防士は、街を守る仕事です。みんなの笑顔を守る仕事です。だから、君たちみんなも、周りの人の笑顔を守れる人になってください。それが、消防士になる第一歩です!」
ほんのり頬をピンクに染めながら、そう言う誠護さん。
「はい!」
子どもたちの元気な返事が街角に響いた。
「あ、ジャー……!」
思いっきり彼を睨み付ける。あいにく両手は子どもたちで塞がっていたから。
誰が子どもたちの前で『ジャージ女』なんて呼ばせますか!
「……じゃなかった、みんなはみちる保育園の子かな?」
「そうだよ、お散歩!」
男の子が、キラキラとした眼差しで彼を見つめる。
「消防士さんも、お散歩?」
誠護さんはハハっと笑って、その場にしゃがんで子どもたちと目線を合わせた。
「残念、僕たちはお仕事。消火栓って知ってるかな? 火事があったときに、お水を出すところ。その、点検をしていたんだ」
「ねえ、何でオレンジの服じゃないの?」
先程青い服だから消防士じゃないと言った子が、誠護さんに尋ねた。
「普段はこの色なんだ。火事の時には、火に強いオレンジ色の服を着る。どっちも素敵な色だろう?」
爽やかな笑顔で、そう答える誠護さん。
園児たちの羨望の眼差しはやまないが、彼だって仕事中だ。
「消防士さんはお仕事中なので、私たちもそろそろ帰りますよ」
邪魔してはいけないと、思わず止めてしまった足を進めようとした時だった。
「えー、まだ聞きたいことある!」
園児たちのブーイング炸裂である。
「僕は全然いいですよ。他の隊員待ってるだけで、暇なんで」
私を笑うときとは違う、爽やかスマイルが私に投げられる。
「じゃあ、質問ある人~?」
「はーい、はーい!」
勝手に指揮をとられ、ため息をつく。
「この横についているグルグルで、火を消すの?」
女の子が消防車を指差して尋ねる。
「残念。これは、水を汲み上げるホースなんだ。おうちの人が、お風呂のお湯でお洗濯しているところを見たことあるかな?」
「あ、ある! ずずず~って、すごい音する!」
「そうそう、そんな風に……」
キラキラ爽やかスマイルで子どもたちに自身の仕事を話す誠護さん。
「お兄さんは、ヒーローだね!」
また別の男の子がそう言って、誠護さんはハハッと笑うと、その子の頭をクシャクシャ撫でた。
「あーずるい! 私もやって!」
いつの間にか彼の周りには園児たちが群がって、頭なでなでを要求している。あっけにとられて見ていると、後ろから一際大きな声が響いた。
「お、黒岩、モテモテだなぁ!」
「隊長!」
ガハハと豪快に笑いながら登場した男性に、一瞬園児たちはピクリと肩を振るわせた。
「俺は怖がられちゃってるよ! ははっ!」
そう言いながらも誠護さんと肩を組んだ“隊長”らしき人は、園児たちに向かってとびきりの笑顔を見せた。
「消防士になりたい人!」
2人がピシっと手をあげて、一人がもじもじと手を上げた。
「お、いいですね。では、未来の消防士諸君に、このお兄さんからメッセージをどうぞ!」
「隊長、無茶ぶりすぎません?」
「いいじゃねえか、夢見せてやれ!」
「ん、んん……えー、では。消防士は、街を守る仕事です。みんなの笑顔を守る仕事です。だから、君たちみんなも、周りの人の笑顔を守れる人になってください。それが、消防士になる第一歩です!」
ほんのり頬をピンクに染めながら、そう言う誠護さん。
「はい!」
子どもたちの元気な返事が街角に響いた。