公然の秘密
テレビをつけたけれど、番組の内容が頭の中に入ってこなかったので消した。

漫画でも読もうかと思ってページを開いたけれど、指が進まなかったのでやめた。

ゲームをやろうと思って手に取ったのはいいが、気分が乗らなかった。

買っていたお菓子でも食べて腹を満たそうかと思ったけれど、そんな気分になれなかった。

「麗一さん、大丈夫かな…」

加納が亡くなったと聞かされて、今頃は警察で事情聴取を受けているであろう尾関のことを思ったら胸が痛かった。

ソファーのうえに座ってぼんやりと時が過ぎるのを感じていた。

日は沈んで、部屋が暗くなったところで柚愛はカーテンを閉めると部屋の灯りをつけた。

お腹が空いているのはわかっているが、今は夕飯を作る気力もない。

柚愛はソファーのうえに座ると、時が過ぎるのを待った。
< 151 / 211 >

この作品をシェア

pagetop