公然の秘密
頭に衝撃を受けた加納は、その場に倒れた。

鉄パイプを片手に持っている弘人は加納を見下ろした。

「ーーお前が…」

倒れて動かない加納に向かって、弘人は言った。

「お前が悪いんだ…協力をしなかった、お前が悪いんだ…!

僕は何も悪くない…悪いのは、お前なんだ…!」

そこから逃げようと思ったのと同時に、鉄パイプに加納の血がついていることに気づいた。

同時に、素手で鉄パイプを持っていることにも気づいた。

血はともかくとして、持っていることは隠さなければ…!

弘人はジーンズのポケットからハンカチを取り出すと、持ち手の指紋を消すように拭いた。

この時間なうえに場所もそうだから、目撃者はいないだろう。

そう思った弘人は鉄パイプをその場に捨てると、逃げ出したのだった。

 * * *
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