公然の秘密
「でも、言って欲しかった…」

そう言った柚愛に、
「もしかしたら、関係がいい方向へと変わるきっかけになったかも知れないな」

尾関は言った。

「仮に彼がもし言っていたとしても、どうなっていたのかはわからないけど…」

続けて言った柚愛に、尾関は何も言わなかった。

沈黙が流れた。

「ーー彼は、当然のことながら罪に問われるよね…?」

先に沈黙を破ったのは、柚愛の方だった。

「まあ、当然のことながら問われるな。

加納を殺したうえに柚愛を誘拐した以上は、罪から逃れることはできないだろうな。

田川の両親に息子のことを報告した刑事曰く、両親共々我が子には完全に無関心だったそうだ。

彼らからして見たら、息子は死んだのも同然だと思っているんだろうな」

尾関はそう言い終えると、息を吐いた。
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