公然の秘密
「そんなことまでは言ってないだろ。

俺は今のままでも充分だと言っているんだ」

弘人が言った。

「じゃあ、結婚してくれてもいいじゃない。

私と結婚したくない理由があるんだったら何か言ってよ」

「理由はない」

それ以上は話したくないと言うように、弘人はその場から離れた。

(理由はないって、何なのよ…)

弘人が何を考えて何を思って言っているか、もうわからなかった。

「私だってもう若くないのよ!?

理由がないんだったら、結婚してもいいじゃないのよ!?

弘人の方こそ、何をそんなにこだわってるのかよくわからないよ!

私と別れたいなら別れたいって、はっきりと言えば!?」

彼の後ろ姿に向かって叫ぶと、柚愛は家を飛び出した。
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