公然の秘密
「もう10日か…」

更衣室を後にして外に出ると、柚愛は呟いた。

(尾関さんだったら、どうするんだろう?

こんな時だったら何をするんだろう?)

カバンからスマートフォンを取り出そうとしたのと同時に、尾関から彼の電話番号を教えられていないことを思い出した。

弘人は帰ってこないし、尾関の家に行こうかと思い立ったけれど、
「迷惑になっちゃうよね…?」

そう呟いて、思い止まった。

(もしかしたら仕事でいないかも知れないし、用事もないのに家に押しかけても…)

柚愛はペチリと額をたたいた。

「今日は外で夕飯を食べよう。

もう何年も外食していないし、久しぶりに外で食べよう」

気持ちを切り替えると、柚愛は自宅とは反対方向への道を歩いた。
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