公然の秘密
何となく目についた串カツ店に足を踏み入れると、
「あっ」

「おっ」

そこにいた人物に柚愛は声をあげた。

「ど、どうも…」

あいさつをした柚愛に、
「おう…」

尾関は返事をした。

「えっと…」

「一緒に飲むか?」

尾関に声をかけられたので、
「それじゃあ、お言葉に甘えまして…」
と、柚愛は彼の向かい側の椅子に腰を下ろした。

店員が飲み物の注文を取りにきたので柚愛は烏龍茶を注文した。

「ここへは、よくくるんですか?」

そう聞いた柚愛に、
「いや、今日初めてきた」

尾関は返事をすると、ビールを口に含んだ。

「あんたは?」

そう聞き返してきた尾関に、
「私も初めてきました」
と、柚愛は答えた。

「忙しくて自炊ができなくて…と言っても、元から自炊してなかったんだけどな」

尾関はフフッと笑うと、玉ねぎの串カツをかじった。
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