公然の秘密
「ありがとうございます」

尾関は店員から持ち帰りにしてもらった串カツの盛りあわせを受け取ると、
「行くぞ」

彼に声をかけられて柚愛は歩き出した。

「ありがとうございましたー」

店員の声を背中で受けながら、柚愛は尾関と一緒に串カツ店を後にした。

しばらく歩いた後で、
「もう店は見えなくなったぞ」

尾関に言われたので、柚愛はジャケットから顔を出した。

「あいつ、本当にひどいな」

尾関は言った。

「煮えきらない態度をとってる自分が悪いのに、あんたのことを悪く言うなんてひど過ぎるにも程があるだろ」

毒を吐くように言った後で、尾関はガシガシと後頭部をかいた。

「八つ当たりはもちろんのこと、結婚してくれないなら別れるなんて言ってないんだろ？」

そう聞いてきた尾関に、柚愛は首を縦に振ってうなずいた。
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