公然の秘密
「もしよかったらだけど、家まで送ろうか?」

「ーー尾関さん」

柚愛は彼を呼ぶと、
「少しだけ、あなたと話をしてもいいですか?」
と、言った。

この間の公園に尾関と一緒に行くと、同じようにベンチに腰を下ろした。

「話は何だ?」

そう聞いてきた尾関に、
「尾関さん、あの時“今の彼じゃなくて、俺でもいいんじゃないか?”って言いましたよね?」
と、柚愛は言った。

「ああ、言ったな。

それがどうした…」

そこまで言って、尾関は何かに気づいたようだった。

「私…もう、あの人と別れます。

あの人と別れて、尾関さんを選びます」

柚愛は言った。

「あの人が、あんな人だったなんて思いませんでした…。

長い間つきあっていたあの人の本性があんなのだったなんて、知りませんでした…」

視界が潤んできて、柚愛は洟をすすった。
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