公然の秘密
先ほどの自信満々なその様子はどこへやら、そんな彼がかわいくて柚愛はクスッと笑ってしまった。

「お、おい、笑うなよ…!」

失態を見られたのが恥ずかしいのか、尾関はムキになっていた。

「でも…あんたのためなら、それくらいのことをするって言うのは本当のことだから」

そう言った尾関に、
「気持ちは伝わりました」
と、柚愛は返事をした。

「…まあ、別にいいけど」

尾関はふうっと息を吐くと、
「よし」
と、切り替えるように言った。

「家は当然のことながら出て、俺のところで暮らすんだろう?」

「ええ、そのつもりです」

「とりあえず、まずはあんたの家に行って着替えとか何かいろいろと必要なものを取りに行こう」

尾関はそう言うと、ベンチから腰をあげた。
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