公然の秘密
「あ、あの…ありがとうございます」

お礼を言った柚愛に、
「何を言ってるんだよ」
と、尾関は笑った。

「礼なんかいらないよ、俺は当然のことをしているんだから。

そうだ、お互いの両親へのあいさつもしないとな」

思い出したと言うように尾関は言った。

「えっ、あいさつに行くんですか?」

「そりゃ、そうだろ。

結婚するんだし、娘をもらう訳なんだし、あいさつは当然のことだろう。

最悪、殴られる覚悟はするから」

そう笑いながら言った尾関だったが、
「そ、そうではなくて…両親にどう説明をすればいいのかわからなくて…」
と、柚愛は困った様子だった。

「説明?」

首を傾げた尾関に、
「今までつきあっていた彼を捨てたこととか知り合って日が浅い人といきなり結婚することになったこととか…」
と、柚愛は言った。

「なるほどな…」

尾関はどうしたもんじゃろかと言うように腕を組んだ。
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