公然の秘密
今まで自分に向けてこなかったその視線に弘人はゾッ…と背筋が震えたのを感じた。

「そ、そりゃ、見るだろ。

あんな置き手紙があったうえに何があったかと思うじゃないか」

そう言った弘人に、
「…そのままの意味ですが」

柚愛は言い返した。

「私はあなたと別れる、だから“お世話になりました”って手紙だけを置いて出て行ったんです」

「わ、別れる…だと…!?」

柚愛の口から出てきたそのワードに、弘人は自分が何を言われたのかわからなかった。

「そ、そんなの…俺は聞いてないぞ!?」

「聞こうとしてもあなたはずっと私のことを避けていたじゃないですか。

今さら何を言っているんですか?」

「そ、それは…」

柚愛はあからさまだと言わんばかりに息を吐くと、
「もういいですか?」
と、冷たい声で言った。
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