公然の秘密
営業時間に弘人がくるかと思ったが、さすがの彼も自分の仕事を休んでまで押しかけてくることはなかった。

「お疲れ様でしたー」

仕事を終えた柚愛は更衣室に入ると、尾関に連絡をした。

「１０分くらいで迎えに行くから、到着したら連絡するからちゃんと中で待ってるんだぞ」

まるで父親みたいなことを言う尾関に笑いがこみあげてくるのを感じながら、柚愛は「わかりました」と返事をした。

尾関が迎えにくるのを待っている間にスマホゲームで時間を潰していたら、彼からメッセージが届いた。

柚愛はカバンの中にスマートフォンを入れると、更衣室を後にした。

「お疲れ、柚愛」

ドアを開けると、尾関が迎えてくれた。

「仕事中にあいつはこなかったか？」

そう聞いてきた尾関に、
「さすがに自分の仕事を休んでまでくることはなかったみたいです」
と、柚愛は答えた。
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