公然の秘密
「そうか…とりあえずはよかったな。

まあ、店だと周りに人がいるからって言うのもあるだろうけど」

「そうかも知れないですね」

「よし、帰るか」

そう言った尾関と一緒にこの場から立ち去ろうとしたら、
「柚愛!」
と、声が聞こえたので振り返った。

「…またあなたですか」

弘人の顔を見た柚愛はあからさまだと言うように息を吐いた。

「仕事が終わるまで待ってたんだ」

弘人は柚愛の前に立つと、
「別れるって、どう言うことなんだよ。

俺は浮気もしていないし、ギャンブルもしていないうえにちゃんと働いてる。

生活費だってちゃんと入れていたじゃないか」
と、言った。

「じゃあ、何で結婚してくれなかったんですか?

自分のことをそう思っていて長くつきあっていたのに、どうして結婚してくれなかったんですか?」

柚愛は冷たい声で弘人に言い返した。
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