公然の秘密
「特に理由もないのに結婚してくれない、あなたとの将来が見えなくなった、あなたとの間に子供が欲しいと思えなくなったーーそれが私があなたと別れたいと思った理由です」

淡々と説明をした柚愛に、
「別に結婚なんてしなくてもいいじゃないか。

結婚なんて、そんなものに縛られるよりも2人で一緒にいることができるならばそれでいいと思ってる」
と、弘人は言い返した。

「ーーわからないな」

そう言って間に入ったのは尾関だった。

「…だ、誰だよ、あんた…?」

弘人は尾関の姿に初めて気づいたようだった。

「俺は柚愛の夫になる男だ」

そう言った尾関に、
「はあ!?」

弘人は訳がわからないと言った様子で聞き返した。

「お…お前、まさか浮気してたのかよ!?

自分のことを棚にあげたうえに俺のことを責めやがって…!」

弘人の躰は怒りで震えていた。
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