公然の秘密
何も言い返せなくて悔しそうな顔をしている弘人から柚愛は離れると、尾関の後ろに隠れた。

「あんたこそ、何で結婚したくないんだよ。

浮気とか借金とか特に負い目になるようなことだって何もないのに、長くつきあっている恋人と結婚したくないんだよ。

何かあるんだろ？

どうしても結婚したくない理由があるんだろう？」

そう問いかける尾関に対し、弘人は何も答えることができないようだった。

「柚愛に何か問題がある…とは思えないな」

尾関は後ろにいる自分をチラリと視線を向けた後、弘人の方に視線を戻した。

「それで、あんたは何で結婚を嫌がっているんだ？」

「ーーッ…！」

弘人は尾関をキッとにらみつけると、自分たちに背中を見せてその場から立ち去った。
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