公然の秘密
柚愛が泣き疲れてソファーのうえで眠っていることを確認した尾関はリビングから離れると、書斎に足を向かわせた。

シャツの胸ポケットからスマートフォンを取り出すと、
「もしもし?」
と、電話をかけた。

「おう、どうした?」

電話の向こう側にいる相手は言った。

「あのさ、ちょっと頼みたいことがあるんだ」

「何?」

そう聞いてきた相手に尾関は先ほどまでの出来事を話した。

「…それはひどいな」

「だろ?

そいつにお灸を据える的な意味もこめて、痛い目に遭わせて欲しいんだ」

「わかった」

相手が楽しそうに笑ったのがわかった。

「それじゃあ、今夜辺りにでもどうかな?」

「仕事が早くて助かるぜ」

尾関もつられるように笑ったのだった。
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