公然の秘密
「えっ…ああ、うん…」

突然声をかけられたので驚いて洗濯物を落としそうになった。

「ああ、ごめん…賞味期限が近いインスタントラーメンがあったから…」

「あ、ええ…」

何故なのかはよくわからないが、お互いの間に沈黙が流れた。

「退職は、大丈夫そうだったか?」

先に沈黙を破ったのは、尾関の方からだった。

「うん、大丈夫だった」

それに対して柚愛は答えた。

「あのさ」

「うん」

「柚愛がよかったらなんだけど、昼飯を食ったら手土産の選別に出かけないか?」

尾関は言った。

「えっ、でも仕事は…?」

「ちょっとつまったから気分転換がしたくて…」

エヘヘと、尾関は照れくさそうに笑った。

「どんなものがあるのかもいろいろと見てみたいし」

「わかった、行こう」

柚愛の返事に尾関は楽しそうに笑った。
< 93 / 211 >

この作品をシェア

pagetop