お前が欲しくて堪らない〜年下御曹司との政略結婚
この日は朝までキスの雨が降り続き、止むことはなかった。

朝、私は目が覚めて、隣で慶さんが寝ている事に驚きを隠せなかった。

昨夜の慶さんとの抱擁に身体がまだ熱りが冷めない。

じっと慶さんの寝顔を見ていると、慶さんが目を覚ました。

「おはよう、美鈴」

「お、おはようございます」

「いいな、美鈴が隣に寝てると、またしたくなっちゃうよ」

「へ、変な事言わないでください、慶さん、もう起きないと遅刻です」

「慶でいいよ」

「恥ずかしいです」

「恥ずかしいって、昨夜あんなに慶、慶って言ってたけど」

「もう、知りません」

私はベッドから起き上がり、キッチンへ向かった。

朝食を済ませて、慶さんは会社に行く支度を始めた。

部屋のドアに手をかけて、私の方を振り向いた慶さんは「行ってきます」と言って、おでこにキスをした。

えっ?なんでおでこなの?

戸惑っている私を置き去りにして慶さんはドアのむこうに消えた。

ガチャっとドアの閉まる寂しい音だけが耳に残った。

「慶」

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