お前が欲しくて堪らない〜年下御曹司との政略結婚
私は彼の名前を呟いた。
やっぱり、思っていたほどの気持ちの昂りは感じられなかったのかな。

慶は若いし、もっと情熱的な方が好みなのかな?

私じゃ慶を満足させられないんだ、きっと。

私は落ち込む気持ちをどうする事も出来ずにいた。

俺はキスだけで昂る気持ちを収めることは出来ずにいた。

いや、ずっとこのままと願ってはいたが、美鈴の感じてるであろう表情、気持ちが昂っていると思われる声、そして何より俺の名前を囁く唇、俺の高鳴る鼓動は止まることを忘れていた。

美鈴は本当に俺を心の底から求めていてくれたのだろうか。

俺はある男に連絡を取った。

精神科医の都築光三十歳。俺の兄貴だ。

戸倉家の長男なのに、さっさと医者になると宣言して家を出て行った。

都築総合病院の娘と結婚して都築の姓を名乗っている。

「兄貴、久しぶり、慶だけど」

「おお、久しぶりだな、お前結婚したんだってな」

「うん、入籍だけ」

「式はあげないのか?」

「そのうちな、親父の具合が良くないんだ」

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