午後八時十七分、シャッター横の路地裏で、
だというのに、女は男の二の腕に再び手を添わせ、心なしか身体も寄せる。
牽制、だろうか。
おそらく、というかまぁ、ほぼほぼ確定でこの女はこのへらへらした男のことが好きなのだろう。彼は私のものよ、とでも言いたいのか。
確かに、私みたいなバトミントンしか能のない色黒筋肉女より、あんたみたいなゆるふわ女子力全開女の方が、誰にでも愛想を振り撒くこの男には似合ってると思う。んでもって、きっと、この女にはその自覚がある。こういう計算高い女が何も知らないわけない。知ってる上でそうしているのだろう。
私もたいがいだけど、この女は違った意味で性格が悪い。でもまぁ、お似合いなんじゃない。人のこと振り回すだけ振り回しておいて、釣れたら生け簀にポイして餌も与えないようなこの男には、あんたみたいな女が。
「みっちゃん?」
と、そこまで脳内で垂れ流して、ようやく我に返れば、不思議そうにこちらを見ている、きょとりとした丸い瞳。「体調悪いの?」と続けられた言葉に、「お前のせでな」と出かかったそれは何とか飲み込んだ。
しかし、視界の中では未だ、女の手が、目の前の男の二の腕に触れている。
いやだから、触るな。
思って、ぎちりと奥歯が鳴って、理解した。
「……きっしょ」
ああ、これが、嫉妬というやつなのか、と。