19年間のクサリ
父は耐えていた。
必死にこらえていたんだ。ここで殴ってはいけない。娘の私が言うのもなんだが、正しい判断だ。父は根っからの九州男児。血気盛んのはずだ。
相手が男だったら迷わず殴りかかっていたであろう。
かという私も父から怒られるときは何度も壁にたたきつけられ物を投げられた記憶がある。
いつ父が我慢できなくなって母親に手をあげるかわからない。
これ以上コミュニケーションが長引くと私の明日のバイトに支障が出る。
私は急いで父と母の間に入る。
泣きながら布団の上で母が対面で座っている父をたたこうとハンガーを振り上げる。
父と母が近くならないように間には私がいる。
振り上げたハンガーは父に当たらず私の腕に当たった。とても痛い。赤くなっている。おまけに眠い。何も考えられない。
「あんたはいいよね!?働かんで海に行ってあの女とくっちゃべてさ!」
「だからそのことはもういいやねーか!終わった話やろうが!」
「終わった話ならなんで気持ちよく寝てる私の耳もとであの女の話をするとかて!」
「せんでいいやん!私も水に流そうとしてるとに!」
母はそう言いまた父にハンガーで叩こうと身を乗り出す。
それもまた不発。私に当たるのだ。
「お前いい加減にしとけよ!」
そういい今度は我慢ならなかった父がこぶしを振り上げようとする
「いい加減にして!!」
「こんなことになるのは全部あの女のせいやっちゃね!?じゃぁ今から私があの女のところに行って殺してきちゃるわ!!」
私はそう言い玄関に向かった。
父は最近浜辺に行き友達ができたみたいだ。女の
その女のことで理由は私にもわからないが喧嘩をしている。
そして私は今から深夜の1時こんな深夜に他人様の家に行くのだ。
私がこんなに寝不足なのも
こんなに苦しい思いをするのも全部全部あの女が親父にちょっかいをかけたせいだ。
あいつ殺して私も死ねば世の中ハッピーなんじゃないか
寝不足で眠い中の私の思考回路はくるっていた。
私の後を母が追いかけてくる
「あおいもういいから!帰ってきて」
「よくないでしょ?もう無理だよ。あの女が私たち家族をぐちゃぐちゃにしたんだ。なにがいいの?」
そういう私に対して母は
「いいんだよ。私が我慢すればいい話だから。あんたが家に帰らないならあの男を家からおいだす。」
どんだけ夜中にコミュニケーションをする母たちでも
深夜3時や4時まで繰り返すコミュニケーションをする母たちでも
私の両親だ。嫌いで嫌いで仕方ないときはあるが好きでもあった。
「わかった。かえる。」