「こんにちはー、ねこねこサービスでーす。」
「こんにちはー、ねこねこサービスでーす!」
ここは、
とあるマンションの一室。
ドアを開けると、和室奥に
初老の男性が座っていた。
「きたな、元気な黒ネコ。茶はどうか。」
「飲み物は持参してますので、おかまいなく、本日はご利用ありがとうございます。」
「そうか、じゃ部屋の掃除と、話を聞いて貰おうか。」
「はい!かしこまりました!」
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「当社では、ネコ型ロボットの派遣をしております。家事、育児、話し相手…どんなご要望にもお答えしまーす。」
「ねこねこサービスって、最近よくCMしてるよね。わりと便利だし。」
「ネコの形がいいんじゃない、前に綺麗なヒト型が来て、浮気と勘違いされて、トラブルあったらしいし。」
「その点、ネコちゃんだと安心よね。」
「そうだね。」
「…でも中身はヒト型と同じよね?」
「そうかもね。」
「浮気しないでよ。」
「ははは」
ピンポーン
「こんにちはー、ねこねこサービスでーす。本日は、ご利用ありがとうございまーす。」
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「ネコちゃん、付き添いで来てくれてありがとう、本当に良い景色だわ。」
「では皆さんお写真撮りましょうかー」
「はい、チーズ!」
パシャリ
「では次は湖まで移動しまーす。皆さん、お車に、ご乗車くださーい。」
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洗濯物をしまおうと
タンスを開けると、女物が入っていた。
「妻は早くに亡くなった。世話をしてくれたヒトはいたが、勝手なことをするから追い出した。ヒトは苦手だ。」
「…で、ネコ型ロボットですか」
「大昔にもあった。
ネコなら抵抗感がなく仕事がやりやすいだろう?
一番恐ろしいのは、ヒトだ。」
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「父さんも来ればよかったのに。」
「来るわけないわ。義父には会いたくないし。やっとあの家から出てきたのよ、戻りたくないじゃない。貴方も酷い目にあってたでしょ。」
「そうだけど、やっぱり実の父だからさ…。」
「酷いヒトよ、義母が亡くなったのも義父のせいなのよ。私、知ってるんだから。」
「なにを?」
「ネコよ、ネコ。」
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「掃除したら、こんなものが出てきまして。」
「山に旅行にいった時の写真だな。息子夫婦も写っとる。」
「あなたが写っていないようですが…。」
「ワシは風邪をひいて寝込んでいた。代わりに奴らはネコを連れていった。」
「そうですよね、ヒトがお嫌いなんでしたね。」
「……。」
「人嫌いのあなたは
ネコのフリでもしないと会ってくれないと思って」
「あの事件を覚えていますか?」
「……。」
「覚えていますよね?
あなたが、したことですから」
「旅行先で
湖に車を沈めるのを
ネコに命令したのは。」
「あなたですね。」
「…許してくれ。」
「許すことなんか、なにもありませんよ。ただ真実を知りたかっただけです。」
「ネコは忠実ですから。」
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「便利なんだよね」
「なんでもやってくれるって」
「えーうちも頼もうかなー」
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ピンポーン
「こんにちはー、ねこねこサービスでーす。」