赤い華と呪いの言霊
人に見つからないよう裏路地に隠れていると、「大丈夫?」と不意に声をかけられた。その声をかけてきたのが美紅だった。

美紅は柘榴の手当てをし、ジュースやお菓子をくれた。見ず知らずの他人に優しい人は少ない。柘榴は美紅にだけは心を開こうと決めた。

そんな彼女は、もうこの世にいない。柘榴は震える足で何とか裏路地まで歩き、大きく息を吸ったり吐いたりを繰り返す。動揺し、心臓の鼓動はかなり乱れていた。

「……真実!真実を私に!」

動揺しながらも柘榴がそう言うと、頭の中に映像が流れ込んでくる。柘榴は真実を見る力も持っているのだ。

『アハハ、きったな〜!!』

『バイ菌!ブス!』

『さっさと私らのジュース買ってこいよ、ノロマ!!』

柘榴の頭に浮かんだのは、無抵抗の美紅が数人の女子にいじめを受けているところだった。教室のど真ん中の出来事だというのに、クラスメートは見て見ぬふりだ。

悪口を言われ、教科書や制服をボロボロにされ、美紅がどんどん傷付けられていく。しかし、美紅に手を差し伸べる者は誰一人としていない。
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