喧嘩最強男子の溺愛
◎ 第四章 蒼汰くんと島田くん、気になるのはどっち
翌朝、同じ電車の同じドアの前。
昨日までと違うのは隣に有村蒼汰くんがいること。
「昨日は突然告白なんかしちゃって、ごめん」
「ううん。少しびっくりしたけど、気持ちを伝えてくれて、ありがとう、有村くん」
「あのさ、俺のこと蒼汰って呼んでくれないかな。有村くんってなんか慣れなくて。あと、イヤじゃなかったら帆乃香ちゃんって呼んでもいい?」
「はい。いいですよ。帆乃香って呼んでください」
「マジで?! 名前で呼んでいいの? ありがとう!」
こんなことで喜んでいる有村くんを見ていると、なんか癒される。
「帆乃香ちゃん、昨日は遅刻しなかった?」
「うん、私はギリギリ大丈夫だったよ。蒼汰くんは?」
「・・・・。」
「ん? 遅刻しちゃったの?」
「いや、大丈夫だったけど。今、蒼汰って言った?」
「だって、そう呼んでってお願いされたから」
「俺、めっちゃ嬉しいんですけど」
「へっ? 何がですか?」
「だって、帆乃香ちゃんが俺の事、蒼汰って」
そう言って蒼汰くんが本当に嬉しそうな顔で喜んでいる。
その顔を見ているだけで、こっちまで顔がにやけてくる。
二人で微笑み合っていたら、誰かに頭を叩かれた。
「痛っ! 誰?」
「お前、相変わらずマヌケ面だな。ほら、降りるぞ、早く来い」
私の頭を叩いたその人は島田くんで。
島田くんは私の手を引っ張って電車から私を降ろした。
「ちょっと、何するの? 離して」
蒼汰くんは少し訝しげな目をして私たちを見ていた。
私は閉まりかけのドアに向かって、
「蒼汰くん、またね!」
蒼汰くんに聞こえたかどうかは分からないけど、そのまま蒼汰くんを乗せた電車は行ってしまった。
「島田くん、もう手を離して」
「無理。お前、あいつと付き合うことにしたの?」
「島田くんには関係ない」
「あっそ。でもアイツ、どこかで見た覚えがあるんだよな」
そう言って島田くんはブツブツと言いながら、やっと私から手を離した。
なんなの、島田くん。
いくらイケメンだからって、性格に難ありだったらモテないよ。
まぁ、昨日は助けてもらったけど・・・・。
駅から学校までの道、何故か島田くんは私の隣を歩いていて。
「郁人だから。今から郁人って呼べよ、帆乃香」
はい? 何を急に言ってるんでしょうか、島田くんは。
「どうしたの? 島田くん」
「お前、あいつのこと蒼汰って呼んでたよな?」
「うん、だってそう呼んで欲しいからって・・・・えっ?」
「じゃ、郁人って呼べよ」
「そう呼んで欲しいってことなの?」
もう何を聞いても島田くんは無言で。
私は島田くんが理解できなかった。