喧嘩最強男子の溺愛
◎ 第七章 私の好きな人
郁人と私が学校へ到着したのは3時間目がちょうど終わった休み時間だったから、クラスの子たちに気付かれずに教室に入ることができた。
まず、有希の所へ行って郁人が借りたスマホを返す。そして、
「有希、心配かけて本当にごめんね」
「帆乃香、大丈夫だったの? 島田と連絡とれたの?」
「うん、有希のスマホのおかげだよ。話せば長くなるからお昼休みにゆっくり話すけど」
「ああー、話を聞くの待ちきれないから4時間目サボるよ。ちゃんと聞かせて」
有希は私に有無を言わさず、私の手を引いて屋上まで連れてきた。
「さ、帆乃香。色々聞くよ。一体何があったの?」
有希がこんなに心配してくれている。
郁人の言った通りだね。
有希なら私の親のことや蒼汰くんのことを話しても、イヤな顔しないで聞いてくれるのかな。
「蒼汰くんに告白されたって話しをしたでしょ? それ、騙されてたの」
「は? どういう事? なんで帆乃香を騙す必要があるの? だって帆乃香、良さそうな人だって言ってたじゃない」
「蒼汰くんに出会う前にね、海人くんっていう小学生と知り合いになってさ。その子が高校生とトラブルになったところに私が間に入ったんだけど。最終的に助けてくれたのは島田くんで・・・」
「ごめん、帆乃香。登場人物があちこちに急すぎて良く理解できない」
「そうだよね。私も最初は頭が追い付かなくて。まず、海人くんは島田くんの弟でね」
「へぇ、帆乃香は島田の弟と知り合いだったんだ」
「うん。それでね、海人くんとトラブルになった相手が蒼汰くんたちで。そこへ島田くんが登場して、蒼汰くんたちを脅してくれて、助かったってわけ」
「帆乃香はそんなトラブルに遭った相手の顔を覚えていなかったの? 蒼汰ってヤツ、その時の仕返しのために帆乃香に近づいたってことなの?」
「うん、私も島田くんも蒼汰くんがあの時の高校生って気付かなかった。ただ、島田くんは嫌な予感がしてたんだって。だから蒼汰くんを簡単に信用するなとか、帰りはまだ危険だから送ってくれるって言ってくれたの」
「そんなことがこの数日の間に起こっていたんだ。島田が守ってくれたんだね。島田がいてくれて良かったね、帆乃香」
「うん、それさっきも島田くんに言われたよ。私に優しくしてくれるのは弟の海人くんの友達だから当然だって」
「島田がそんなことを帆乃香に言ったの? なに、アイツ。言葉と態度が全然違うんですけど」
「そうなの?」
「今朝ね、島田が血相を変えて私の所に来てさ。とにかく帆乃香に電話しろって大騒ぎしてたの」
あの郁人が血相を変えるほど慌ててたなんて想像できないな。
「クラスの皆がその剣幕に驚いて。その気迫が怖くてスマホを島田に渡したんだよね。そしたら私のスマホを持って学校を飛び出して行ったからさ。帆乃香に何かあったんだな、って心配してたんだから!」
「心配かけてごめんね、有希」
「本当よ! もう心配掛けさせないでね。でもこれからは島田が側にいてくれるんでしょ? だったら安心だね」
「それは分からないな。島田くんとは弟の海人くんを介しての付き合いだから」
「今朝の島田を見てたら、弟の友達がどうの、って言うより帆乃香の事が心配でしょうがないって感じだったけどな」
確かに郁人はすごく心配してくれてた。
有希は言葉を続けた。
「まぁ、弟の友達だから帆乃香を守るって言う表現をするところは島田らしいのかな。かっこいいじゃない。それにやっぱり優しいんだね」
「そうだね。私も島田くんってとっても優しいって気付いたよ」
「優しいって思っただけなの?」
「有希、私ね、分からないの。島田くんのことを考えると、苦しいの。どうしてなの? 意味が分からなくて」
有希は私が苦しいって訴えているのに何故か笑っていて。
「帆乃香、もう少し島田のこと考えてごらん。きっとすぐに答えは出るよ。その苦しみが何なのか。泣きたくなったらいつでも話してね」