喧嘩最強男子の溺愛
郁人のことを話していたら4時間目が終わってしまい、有希には親のことを打ち明けることができなかった。
それはまたの機会にするとして・・・。
お昼休みになったから郁人に何か飲み物を買って行ってあげようと自販機まで行ったんだけど、郁人の好きな飲み物が分からなくて。
私、郁人のこと何も知らないんだ・・・。
考えても思いつかないから、私がいつも飲んでいるイチゴのパックジュースを3つ買って。
1つは有希に。1つは自分に。
あとは郁人が飲んでくれそうなら、あげようと思って。
有希と教室に戻ると、郁人を数人のクラスの女子が囲んでいて。
隣の私の席に座って郁人と話している子もいて、なんとなくジュースを渡しにいける感じじゃないから有希の席でお弁当を食べることにした。
「島田、なにサボってたのよ。上野さんと仲良く授業をサボってたわけ? 皆にバレてるからね」
クラスの女の子が私たちにも聞こえる声で郁人に話している。
私は動かしていた手を止めて俯くしかできなかった。
すると郁人が
「上野さんは関係ねーし。授業にいなかったのは偶然だろ。変な誤解すんなよ。もうあっち行けよ」
なんて言ってる。
私は有希にしか聞こえない声で
「有希、今、胸が痛い。どうしてなのかな」
俯いて、郁人に渡せずにいるイチゴジュースをじっと見つめていた。
「帆乃香、恋ってね、苦しいんだよ」
えっ? 恋? これが恋なの?
「私、島田くんのこと・・・?」
有希が私の頭をポンポンと優しく叩き、
「ライバル多いけど、頑張りなよ。応援するから」
なんて言いながら有希の口元が笑ってて。
「有希、楽しんでるよね?」
「そりゃ楽しいでしょ。帆乃香の初恋だもんね」
私の初恋。
恋をするって、苦しいんだね。
郁人の周りから人が居なくなったのを見計らって、自分の席に戻ると、隣から
「4時間目もサボっただろ。友達と話しできたのか?」
「う、うん。全部じゃないけど、島田くんの話はできたかな」
「は? 俺の話なんてどうでもいいだろ。つーかさ、呼び方島田に戻ってね?」
「それは・・・、学校だし。さっき島田くんも私のこと上野さんって言ってるの聞こえたし」
「ああ、あれはなんて言うか。学校だし?」
「ぷっ! 私のマネしないでよ」
良かった。私、普通に郁人と話せてるよね。
変に意識しちゃうと顔も見れなくなっちゃうから、なるべく普通にしてなきゃ。
「なぁ、それ」
そう言って郁人が指さしたのは私が手に持っているイチゴジュース。
「俺にじゃないの? 3つ持って帰ってきたよね?」
「えっ、なんで知ってるの? いつ見た?」
「・・・違うの?」
「違わないけど。島田くんの飲み物の好み知らないし、さっき女の子に囲まれてて近づけなかったし、それに私の手で温まっちゃったイチゴジュースだけど、いる?」
「あははっ! いいよ。ぬるいイチゴジュース、ちょうだい」
郁人が優しいと、好きが大きくなっていくんだよ。