喧嘩最強男子の溺愛
「ん! この卵焼き、ウマイ! 帆乃香が作ったんだろ? 料理できるんだな」
「少しくらいなら料理できるよ。そんな凝ったものは作れないけどね」
「へぇ、また帆乃香の新しい情報が聞けたな」
「私も郁人の新しい情報を知りたいよ。いつ教えてくれるの?」
「いつでもどーぞ。俺が生まれた時からの話をしてやるよ」
「もう! それ私が言ったヤツだから!」
「はははっ! で、昨日言ってたお知らせって何?」
「それね、お母さんと竜也さんが結婚するって。私も賛成してるの」
「そっか。そんな話になってんのか。じゃ、結婚したら3人で暮らすってこと?」
「そこが悩みでさ。一応新婚さんな訳だし。私、どう考えても邪魔者だよね?」
「うーん。確かにな。すっげー邪魔者だよな」
「ちょっとぉ、そこまでハッキリ言わなくても良くない? 少し傷ついたんですけど」
「じゃ、帆乃香は俺んちに来るか?」
「はい? 郁人は話が飛びすぎだって。しかもどうして郁人の家なのよ」
「悪い。言い方が悪かった。親父のやってる賃貸マンションに来るか? って言いたかった」
「郁人のお父さんは不動産してるの?」
「ああ、前に親父は色々な業種を経営してるって話しただろ。会社があの公園の前のビルなんだよ。海人が帰るビル。あそこで不動産とかリサーチ業とかやってるんだ」
「あそこのビルって郁人の家のビルだったの?」
「あれ? 知らなかったか。Sd’sコーポレーションって会社は俺の親父が経営しててさ。俺はそこのリサーチ業を時々手伝ってるの」
「リサーチ業? それって例えばどんな事するの?」
「いや、リサーチ業って言っても色々あって。市場調査とかがメインかな。ほとんど雑務だから」
「へぇー。初めて聞いたよ。郁人の新しい情報だね。なんか聞けて嬉しい」
「あのビルの3階から上は賃貸になってて。俺と海人もそこに部屋があるの。自宅はあの駅よりもっと先の駅なんだけどさ。仕事で遅くなった時とか、帰るのが面倒な時は泊ってるんだ」
「知らなかった! そうだったの」
「帆乃香があのビルに来てくれたら海人が喜ぶな。もし本気で考えるなら親父に話しておくし。帆乃香の実家からも近いしさ、お母さんに相談してみたら?」
「わぁー。憧れの一人暮らしできるの? したい! してみたい!」
「いや、俺と海人も近くにいるから、帆乃香一人にはならないけどな」
「ううん、それでいいよ。毎日海人くんと会えるもんね。うわ、楽しそう」
「なぁ、俺は? 海人だけかよ」
どうしてそこで郁人が拗ねるの? 私は海人くんの友達だから一緒にいてくれてるって、郁人が言ったんだよ。
「うん、会いたいのは海人くんだけだよ。ふふっ」
「チッ! また海人かよ」
そんな文句を言っている郁人。
「本気で考えてみようかな。機会を見てお母さんに相談してみるね。郁人、アドバイスありがとう」
そう遠くはない将来に郁人の側に住めるかもしれないと思うだけで私は幸せな気持ちになった。