喧嘩最強男子の溺愛

すでに薄暗くなりつつある公園の中、私は3人の男の人に囲まれる。

怖い。膝が震える。私、何されちゃうの?

うつむいたまま3人の顔を見ることができない。

「名前、教えてよ。何年? 学校どこよ?」

これは本当のことを教えなきゃダメなのかな。

学校とか本名とか教えたら面倒なことになりそうで、無言を貫いた。

「ねえ、なんとか言ったらどう? このまま帰れるなんて思ってないよね?」

「・・・・・。」

「おい! 俺たちさ、今は優しく話してやってんの。お前の出方次第ではどうなっちゃうか分からないよ」

そう言って肩を掴まれる。

「やっ、止めてください。触らないで」

私の肩を掴んでいる手を振り解こうとして男の手を思い切り叩いた。

「いってぇ。おい! てめーの弟がぶつかってきたんだろ。俺たちにそんな口聞いていいのかなぁ」

私の肩を掴んでいた男の手が一瞬離れると、手のひらを私の頬に向けて振り下ろした。

もうだめだ、叩かれる! 目をギュッと瞑って身構えると

「帆乃香!! 大丈夫か? ほーのーかー!」

雑居ビルから海人くんが叫びながらこちらへ走ってきて。

海人くんの大声に驚いた男は振り上げた手を止めて海人くんの方を睨んだ。

「海人くん、こっちに来ちゃダメ。おうちに入って!」

暗がりから現れた海人くんを見ると、隣に背の高い男の人が一緒に居て。

もしかして海人くんのお父さんかな。

その人はとても低い声でその3人に向かって怒鳴った。

「てめーら、何やってんだよ。俺が相手してやるから、こっち来いよ」

海人くんのお父さん? 大人がそんなこと言って大丈夫?

3人対海人くんのお父さんらしき人が睨み合っている隙に、海人くんが私の手を引いて公園の外に連れ出してくれて。

「帆乃香、もう大丈夫だから。あいつ、喧嘩強いんだ。あんな3人なんて指一本で倒せるから。だから帆乃香は早く帰って」

「でも、相手は3人だよ? どうしよう、警察呼んだ方がいいかな」

「本当に大丈夫だから。あいつに帆乃香はここから逃げるように言えって言われたの。だから早く!」

「う、うん。分かった。じゃ海人くんもおうちに戻って」

私と海人くんは公園を後にした。

私が家に帰ろうと足早に歩いていると、さっきの3人組の一人が私の脇を走って逃げて行った。

「お前、ホノカって名前だな。覚えたからな!」

その男は私を追い抜かす時に叫んで、暗闇に消えて行った。

3人組はバラバラになって逃げて行ったようだった。

怖かった。でも名前だけしか情報は漏れていないし、大丈夫、きっと大丈夫。

そう思いながら誰もいない家で一人、不安な夜を過ごした。

今日のことは早く忘れて、明日からの新学年、新しいクラスに慣れることだけを考えよう。

きっと楽しいことが待っているはず。

ポジティブに考えるようにしたら少し落ち着いて。

あっと言う間に眠りに落ちた。


< 4 / 65 >

この作品をシェア

pagetop